チェンバロは、かなり弦の張力が弱い為、良く狂う。
また、楽器全体が主に木でできているために、湿気や温度によって、かなり影響を受ける。
その為、チェンバロ奏者は、こまめに自分で調律や調整を行うことになる。
一回のコンサートではリハーサルを入れて、少なくとも3回の調律をする。
一人での練習時には時間と狂いを天秤に賭け、我慢できるなら前日のまま練習をすることもあるが、生徒さんがいらした時は、そういうわけにもいかず調律する。また、他の楽器とのアンサンブル練習では、休憩の度にチェックをするようになっている。
こう考えるとチェンバロを始めて25年以上、私はこの調律という物をどのくらいの数やったんだろう…とふと思う。
そして、この調律というものには様々な考え方があり、一筋縄ではいかないものである。
ピアノという楽器が生まれ、調による違いや、調そのものもそれ程、こだわらなくなってきた19世紀20世紀では、平均律というやり方が一般的だ。これは12個の音を均等に割り振ったもの。という事は均等ではない調律法がその前にはたくさん存在していたのである。
ドーソという5度という音程が、一番美しいのは純正、つまりうねりがまったく聞こえない状態の時です。
しかし、平均律の5度はその純正の響きから2セント(対数)狭くした音程となっている。この2セントずつ12の音をせまくして、出来上がった調律法は実際の美しい5度の音程で作った12の音との差は2×12で24セントというずれがある事になる。しかし、オクターブで考えるとこの24セント多いのはだめなのだ。その為この24セントをどこの音から減らしていくか、が様々な音律(調律法)を生んだ原因になった、困った数値、興味深い数値であるわけだ。
調律法は時計のように12の印のついたサークルで、説明されたり、表されたりする。
手書きで見難いかもしれないが、その中の調律法のひとつ。バッハの弟子であったキルンベルガー氏による調律法
彼は、ドーミの3度に純正の3度を入れることにこだわったのだが、先生のバッハはまったく反対していたらしい。
そして、当人のバッハはこのようなサークル図は残していないので、バッハの調律法はどんなものだったのであろうか??と多くの専門家がその解明に力を注いでいたし、現在もいる。
バッハの紋章に音律が隠されていた!
という話とその説明は1970年代からあったので、耳にしている方も多いかもしれない。
それが、2年前の2005年にLehman氏が「平均律クラヴィーア曲集第1巻」の表紙に彼自身が書いたループ模様の中から、調律法を解明したという発表がなされたのです。
この年は、その調律法での試験的演奏会もいくつか開かれて、かなりセンセーショナルな年だった。
そのループ模様はただの模様と思った出版社が、大事な部分の一部を落として印刷されている楽譜を私は持っている。それがこれ。
一番上の部分のぐるぐるっていうやつです。
この解釈は、ここに書き記すのはやめますが、キルンベルガーに反対していたとおりにドーミの3度は純正にはなっていない。
この解釈に対して、わが日本の楽器学者 野村満男氏が意見を述べている論文を改めて見てみると、この分野の奥の深さに感心してしまう。
そのような事を考えた楽器にとってはつらい梅雨の一日でした。
難しい話でごめんなさい。
非常に面白いです!調律の世界、奥が深いんですね。それも、バッハの時代の楽器と楽譜となれば、研究に次ぐ研究があることでしょうね。
楽器は湿度や温度の変化に敏感ですから、梅雨の時期は大変ですよね。私は北海道出身ですが、うちにはグランドピアノがあったので、冬は寒さと乾燥(特に、ストーブによる乾燥はものすごく、昔から加湿器を使ってました)への対策が大変でした。
もちろんうちはただの趣味ですからそんなに何度も調律したわけではないけれど、弦が切れたりなど、色々思い出があります。
凄い勉強になりました♪
チェンバロがそんなに調律が必要なんて知りませんでした。。なんか、日本の三味線とかみたいですね。。あれも弾くたんびに、調律してますよね。。
繊細な楽器なんですね。。だからあれほど繊細な音色なんですね。。
私はピアノを弾くって言うほどのレベルではないのですが。。
なんか、バッハが無性に弾きたくなりましたね。。心はバロックへ(笑)
めぎさん
大変奥深いですね。バッハに関しては、彼は調律法に関する文献は残していない。これは、彼が多忙で、作曲、演奏、指導に明け暮れていたからかもしれません。フランスのラモーは、自分で書き残していますけれどね。
自宅にグランドピアノがあったんですね。すごい。寒いところは、暖房による乾燥がすごいらしいですね。ピアノの弦が切れるのもすごいことですね。
Zunkoさん
勉強になったですか?!
この楽器と付き合うには、多少の苦労がつき物です。ピアノをやっていたときは、他の楽器の人たちのように、自分で可愛がれない、手をかけられないってのが、なんか寂しかったんですね。チェンバロに転向して、ちょっと大変だけど楽しさを感じましたよ。
でも、忙しい時の調律はきついです。 バロックへウェルカム!
初めまして。Ceciliaさんのところからきました。
私はリュートを習っているのですが、チェンバロの調律って大変そうです。演奏会の直前まで調律されていますものね。それに比べると、私の楽器の15本の弦の調弦なんて大したことでないように思えてきます。
さて、調律の問題は奥深いですね。私は、レーマンの論文の概要を『響きの考古学』という本で読みました。
nyankomeさん
いっらしゃいませ。お返事遅くなってしまってごめんなさい。
前から、アイコンは拝見していまして、リュートの方がいらっしゃるんだ、と思っていました。チェンバロにおとらず、リュートの調律も大変ですよね。レーマン氏の見解は、興味深いですが、うのみにも出来ず、それに対しての野村氏の文が出てきて、比較したり楽しいです。興味がありましたらお分けしましょうか?
ギターを弾いているときには、古典調律のことは知りませんでした。
リュートは可動フレットですから、必然的に調律の問題に関わらざるをえません。(でも、今は平均律で調律しています。)
野村氏の論文に興味があります。
nyankomeさん
では、論文送りますよ。かまわなければプロフィールから送り先を入力ください。