イタリアオルガン事情その9

ボローニャのオルガンを紹介しましょう。

この町は、大学のまちとして栄えた町。そのなのとおり、学生らしき人たちが観光客の中にまじって多く見られる。

この町には、歴史的オルガンとして有名な楽器がある。

そのオルガンにたどり着く前に、マルティーノ教会にある緑色に彩色されたチプリ作(1556年)のオルガンを見学。この日は外装を修復中のため、教会外部は全くみえなかったので、観光のページにあった写真を載せる



祭壇を通って、オルガン演奏の場へ。

このオルガンツアーもこのボローニャが最終日である。それまで、たどってきた楽器は、徐々に大型になってきている。ここのオルガンはいままでやはり一番大型である。

そのわりにタッチは軽い。音質は柔らかい。かなり、上部にあり美しい緑色のこの楽器から流れる魅力的な音が、信仰を深める為にも、大変重要だったのだと再認識。1時間ほどをこの空間で過ごす。

この後、お昼休憩。

ボローニャに来たからには、スパゲッティ・ボロネーズを食べようと、イタリアの演奏家にお店を教えて頂き入る。

入るっていっても外のテーブル。待つこと40分ほど。ようやく来たこのスパゲッティは、やっぱり美味でした。

さて、その後、この町の一番人の集まるらしい広場に面したペトロニオ教会へ。

この教会がこの町の大聖堂と思っていたが、もう一つ大きな教会があり、そちらを大聖堂(ドォーモ)と呼ぶようである。

上の画像の右手が教会。ファッサード(正面)の上半分は未完成。中には、完成予定図画数点飾ってあった。

さて、この教会のオルガンが有名なものである。

祭壇の左右に歴史的なオルガンが2台置かれている。

向かって右はプラート(1471-74)とファッケッティ(1531)に作られたオルガン。



一緒にいったメンバーが写っているが、人間とオルガン、パイプの太さと人間を比べてみてください。

今まで見た中で本当に大きい。

左には1596年マラミーニ作のオルガンがある。

特筆すべきは右側の楽器。めずらしい24フィート(普通は16フィートが最低音)といわれる太い館(パイプ)が最低音に配置され、その音は、弾いている瞬間には聴こえてこず、徐々に低い深い地の底から伝わってくるような音が腰に伝わってくる。

この夢のような場所で2つのオルガンを行き来して1時間ほど試奏させて頂いた。

今までの中では、パイプが多く、太い為か、鍵盤のタッチは大変重い。これはもうチェンバロ奏者のタッチでは太刀打ちできない。 このぐらいの大きさになったパイプオルガンは、盛期バロック時代には、オランダやドイツ、フランスなどで多く作られていて、その時代にはチェンバロ作品とオルガン作品は全く別の考えで作られ演奏されている。しかし、初期のイタリアで生まれたばかりのバロック鍵盤作品は、オルガンでも、チェンバロでも演奏可能という状況が、オルガン試奏の旅をしてみて、心底納得出来たのである。

このような機会を提供してくれた、知り合いのイタリア人オルガン・チェンバロ奏者に感謝している。

また、彼らとの話の中から、このような初期オルガンの危機的状況も分かった。

歴史的なオルガンを3日間で凝縮して見学出来たのだが、イタリアではこのようなオルガンを維持する(上記の有名なオルガンは大丈夫だが)財源が乏しいそうだ。

これには驚きを覚えた。教会の位置付けは、市民の生活と密接な関係があるものと思っていたし、愛されているものであろう。その教会と信仰に大事なオルガンがこのような状況とは、思ってもいなかったのだ。

また、オルガニストは非常に給料が低いことなどもあり、なり手も少ない様子。なっても食べていくのが大変。

オルガニストが雇えない、いない教会はメンテナンスにお金をかけれない・・・などから、歴史的に重要な楽器、建物が、今現在、朽ち果てていく方向にあるそうだ。

なんともったいない事!!何とかできないものか?!もちろん献金するという直接的なものもあるけれど、

以下のような誰にでも簡単に出来る提案も彼らから出た。

イタリアが好き、観光に足を運ぶ皆様が、大変興味ある様に積極的に教会や歴史的建造物を訪問し、色々質問をして、遠い国日本でも、大変、興味を持っている人が多くいるよ!と伝えること。

こういうことが、イタリア政府に多少ともこのような財産を保護する気持ちへの働きかけにもなるのではないでしょうか、と。

私はどこかで観光というものが、重要な歴史的な財産を食い物にいている人々がいて、それに乗ってただ騒いでいるような、マイナスの感覚があったのだが、そればかりでは無い事に気付いた。その財産自体を守る事に成りえるのかもしれない。

このような思いを持って、ぜひ、大変な財産が失われないよう、興味を持っていただけたらうれしいなぁと、数回にわけて、このブログを書いた次第です。


コメント

イタリアオルガン事情その9 — 7件のコメント

  1. 初めておじゃまさせていただきます。
    ボローニャの街も、そこにあるオルガンも、音楽に酔う前に
    視覚で酔ってしまいそうなたたずまいですね。
    どんな音か聴いてみたいものです。

  2. aranjuesさん
    Nice&コメントありがとうございます。
    どんな方かしらと、そちらにもお邪魔させていただきました!イタリア料理好き、ビール好きですね!!
    私も地ビールは思わず買ってしまいます。今のお気に入りは、チェコのピルスナーとエビスの限定品のエンジ色の缶です。
    音楽は環境も大事と思います。雰囲気に酔い、音楽に酔い、アルコールに酔う・・・ステキですよね。

  3. ああ、なんて、なんてステキなんでしょう!
    イタリアの歴史を感じますね。
    ドイツはどうしても、多くが新しいんですよね・・・
    このような歴史遺産を埋もれさせないためにも、できることをしていきたいですね。

  4. 大きな教会ですね。
    オルガンも、なんだかすごく立派だし。
    歴史あるものが廃れていくのは残念ですね。
    私自身でイタリアへ行く機会があるかというと、この先どうだかわかりませんが、観光の重要さがよくわかりました。

  5. めぎさん
    本当にすてきです。教会は外から見ても、中から見てもあっとうされる物があります。イタリアの凄さは、生み出す力、楽しむ力と痛感しました。
    ご飯が美味しいのもそれでしょうかね。

  6. YAPさん
    本当にボローニャは圧倒されました。
    この地方(ルネサンス芸術)に比べ、ローマの建造物はバロックですね。ごちゃごちゃしていて、綺麗というか、感情的な様式…目で見て、ルネサンス、バロックが分かるというこのイタリアはすごいです。

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